1)REIT(リート)とは
REITは、上場株式と同様に証券取引所で誰でも購入することができます。
日本の証券取引所に上場しているREITをJ-REITと呼び、海外の証券取引所でも各国のREITが上場しています。
実物の不動産投資の場合、数百万円〜数億円の資金が必要なため、投資できる人は限られています。
ですがREITであれば、1口あたり数万円〜数十万円程度の金額で投資を始めることができます。
また、通常個人投資家が行う不動産投資は、ワンルームマンションやアパート投資が中心になっていますが、REITであれば、賃貸用マンションの他にオフィスビルやリゾートホテル、商業施設や物流施設など幅広い物件に投資することができます。
REITであれば、自身にとって身近ではない遠方の地域の物件にも投資することができ、様々な物件に効率的に分散投資をすることができます。
また、REITは税制上不動産投資で得た利益の9割を投資家に分配することで法人税が免除される仕組みになっているため、多くのREITが投資家に積極的に分配金を支払っています。
REIT(リート)と不動産投資の違い
REITを検討する際、実物不動産への投資と比較する方も多いでしょう。 しかし、実物不動産の投資とREITへの投資は、実際には多くの相違点があります。
不動産投資は、1つの物件が高額になるため、購入した時点で資産全体に占める不動産の割合は高くなり、ローンを組んだ場合は、債務も大きくなります。
また、家賃収入から借り入れ金や経費を支払うため、収支管理をしっかりする必要があります。
このような経営的なスキルが必要な上、都心の物件は人気で価格が高騰しているため、家賃収入の表面利回りは3%台程度の物件も少なくありません。
さらに、空室が発生した場合は減収になる一方、経費はなくならないので家計収支に余裕があることが不動産投資の最低条件になります。
一方でREITへの投資であれば少額で投資ができるうえ、プロが運用してくれます。また、分配金は各種経費を差し引いた利益を元に支払われるため分配金から更に諸費用を引く必要はありません。
もちろん、投資法人の経営破綻や上場廃止のリスクはありますので、複数のREITに分散投資をする必要はあります。
実物不動産への投資と、REITへの投資は分けて考えましょう。
REIT(リート)のメリット・デメリット
REITのメリット |
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REITのデメリット |
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ここまで述べてきた通り、REITのメリットは少額で投資ができ、安定した分配金が期待でき、上場しているため流動性が高く換金しやすい点です。
その上、実物不動産のような管理の手間や費用の負担は投資家には生じません。1つのREITは複数の不動産物件を保有しているため効率的な分散投資が可能です。
しかしデメリットもあります。
REITは投資家から集めた資金を元手に借り入れをして物件を購入しているため、経済危機が訪れた場合には投資法人が経営破綻することがあります。
また、金利が上昇すると銀行への支払い利息が増えるため利益を圧迫します。景気に敏感なオフィスや商業施設のREITの場合、家賃収入が急激にダウンする可能性があります。
また、地震や火災で物件が損傷した場合、相当な痛手を追う可能性もあります。
その上、REITは実際の保有物件で計算した理論値よりも価格が高騰することもあれば、その逆もあり実物不動産よりも流動性が高い分、価格の変動が激しい傾向があります。
REIT(リート)の種類
REITには様々な種類があります。
居住用マンションを中心にした住宅メインのREIT、都心を中心にしたオフィス系のREIT、ショッピングモールのような商業施設のREIT、リゾートホテルのような宿泊施設系のREIT、その他様々な種類のREITに総合的に投資している複合型のREITがあります。
また、通信販売の普及は商業施設にとっては不安要素になりますが、物流系のREITにとっては追い風になります。
また、リモートワークの普及によって、サテライトオフィスや郊外物件の需要が増加する可能性もありますので、不動産は都心の物件が全てというわけではありません。
世の中の変化を観察しながら様々なREITに分散投資をすると良いでしょう。
REITへの分散投資を行う場合、まずは景気に関係なく安定的なタイプと景気に敏感なタイプに分けましょう。
住宅系は賃貸用マンションの物件を保有しているREITです。
「衣食住」と言われている通り、人間が生きるためには、景気の良し悪しと関係なく住居は欠かせません。一定の人口が維持できている地域であれば、安定した賃料収入が期待できます。
一方で、商業施設系やホテル系のREITは景気に敏感に作用されます。景気が悪くなれば商業施設のテナントの退店は増加する可能性が高くなる上、新規出店も当然減少するため空室率の上昇が起きやすくなります。
また、ホテルに関しても、景気が悪くなれば、客数現象を抑えるために単価を下げざるを得ず、収益の悪化は免れないでしょう。
しかし、景気は循環します。有利子負債が比較的低く、大手財閥系企業が株主になっているような倒産の可能性が低いREITであれば、景気回復を見越して価格が安い時に投資しておくという手もあります。
一言でREITと言っても、特徴は様々です。複数の種類の銘柄に分散投資をすると良いでしょう。
2)REIT(リート)のはじめ方
REITを購入するためには、証券会社に口座を開く必要があります。
REITの購入手数料は、基本的に株式の購入手数料と同じです。対面型の証券会社よりもインターネット証券会社の方が、手数料が安い傾向にあります。
また、REITは、特定口座もしくは一般NISA口座の対象になります。
一般NISA口座で投資をすれば5年間は譲渡益は非課税になり、分配金も「株式数比例配分方式」(証券口座で配当金や分配金を受け取る方式)を選択していれば非課税になります。
証券口座を選ぶ
証券会社の口座を開設する際は、以下のネット証券などから選ぶと良いでしょう。
証券会社 | 特徴 |
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SBI証券 |
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楽天証券 |
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マネックス証券 |
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auカブコム証券 |
…詳しく見る |
私のおすすめは、ネット証券の中でも実績トップのSBI証券です。
SBI証券では、REIT専用ページが設置されており、投資法人が保有している物件のポートフォリオを見ることができます。
また、分配金の利回りや決算期が整理されて表示されているので、分配金の受け取りが近い銘柄を探す際にも便利です。
NAV倍率というREITの価格が1口当たりの純資産に対し何倍程度の価格を付けているのかを測った(数値が高い程割高)指標で並べ替えることもでき、割安銘柄を探すこともできます。
銘柄を選ぶ
REITの銘柄選びをする際には、投資方針、株主、予想分配金、有利子負債の比率を確認するようにしましょう。
投資方針を確認することで、分散投資を実行することができます。例えば、複数の銘柄に分散したつもりが、都心のオフィス系REITに偏っていたという場合もありえます。
オフィス系の銘柄を選択するのであれば、住宅系や物流系など他の投資方針の銘柄も選択しましょう。
参考:REITの銘柄一覧(一部)
Jリート公式サイトより一部抜粋
恐慌や景気後退が生じた場合には、財務体質が健全な大手企業が株主についていると、信用リスクの面で安心です。
分配金に関しては、過去のものだけではなく予想分配金を確認しましょう。
各REITは財務情報を詳しく開示しているので、過去数年分の分配金の推移と翌期の予想分配金を確認することができます。
中には、業績の悪化から予想分配金が前期の数分の1に減少しているケースもありますので注意が必要です。
価格が下落している銘柄は見方を変えれば割安に見えますが、有利子負債が多い法人は最悪のケースでは倒産もあり得ます。
複数の銘柄をよく見た上で、比較的有利子負債が高い銘柄への投資は慎重に行いましょう。
3)REIT(リート)の注意点
REITは分配金が魅力的ではありますが、不動産投資法人という限られた市場であることは見落としてはいけません。
東京証券取引所によるとJ-REITの市場は、2020年12月末現在で14.4兆円程度です。東証一部に上場している銘柄の時価総額は600兆円を超えていることを考えると、小さな市場と言わざるを得ません。
REITは株式投資や投資信託の投資を行った上で分散対象の1つとして考えることが重要です。
REIT(リート)は市況の影響を受けやすい
REITが実物不動産と大きく異なる点が価格変動の激しさです。変動幅の大きさは株式指数以上と言っても過言ではありません。
例えば、J-REITのインデックスである東証REIT指数は、2020年2月後半では2,200を超えていましたが、新型コロナウイルス感染拡大による経済的な混乱を理由に、1ヶ月程度の期間で半値近くまで下落しました。
その後2020年末時点でも1,800弱程度までしか回復していません。
東証株価指数が2020年末時点で同年2月の株価急落前の水準を超えていることと比較すると回復に時間がかかっていると言えます。
観光需要減の影響を受けやすいホテル系のREITなどは業績の回復に時間がかかっているため、指数を押し下げる要因になっています。
実物不動産の場合、流動性の観点から1ヶ月で半値に下落することは考えにくいと言えます。REITは、流動性が高いがゆえに実物不動産と比較して大幅に変動することがあることを覚えておきましょう。
積み立て・長期・分散の運用を意識しよう
REITに投資する場合も、積み立て・長期・分散が基本になります。積み立て投資の場合は、東証REIT指数連動型のインデックスファンドへの投資が有効です。
インデックスファンドへの投資なら60を超える指数構成銘柄に分散投資をしていることになります。個別銘柄のように上場廃止のリスクもないので安心です。
東証REIT指数は、2007年5月に2,500を超えていましたが、2008年のリーマンショックの時には、800を割れる水準まで下落しました。
一括投資であればこのような状況になるとしばらく塩漬けを覚悟しなければいけませんが、積み立て投資であれば、価格が下がったところで多くの口数を購入できるので、回復が早くなります。
資産形成期は、分配金目的で銘柄を探すよりも資産の拡大を優先させてインデックスファンドへの積み立て投資に割り切るのも一案です。
まとめ)REITは資産分散の1つとして選択する
REITは株式投資に似た性質のものになりますが、利益のほとんどを分配金として投資家に還元するという仕組みゆえ、資産規模の拡大は期待しにくいと言えます。成長を期待するのであれば、株式の方が適しています。
一方で、少額でも一頭地の不動産市場に投資できるのは、REITの強みと言えます。
REITへの投資は、株式、債券、投資信託、実物不動産への投資と分けて分散投資の選択肢の1つとして検討すると良いでしょう。
また、海外のREITに投資する際は、投資信託や海外ETFが有効になります。
こちらも分散投資の一環として検討することで資産の偏りを防げます。
REITの特徴をよく吟味し、資産形成に役立てましょう。